「国民総セックスレス時代」が叫ばれる現代の日本から、失われつつある性欲と気力。これに危機感をおぼえたトイズマガジン編集部は性のプロフェッショナルを迎えてお話を伺う「性欲アップ講座」を開設しました。
今回、ご教授いただくのは、「自立支援センター むく」の理事長である木村利信さん。最終回では、「自立支援センター むく」の今後の展望についてお話していただきます。

――やはり未だに、福祉業界からの理解は得づらい状態なんでしょうか?

自立支援センター むく 理事長・木村利信(以下、木村):福祉業界からは賛同はなかなか得られませんね。アダルト業界はまったくウェルカムで迎えてくれるんですけど。「協力するからどんどん一緒にやろうよ」って、声を掛けてくれます。

――とはいえ、土台が福祉であるからには、アダルト業界の繋がり一辺倒というわけにもいかないですよね。

木村:これはもう、福祉業界を変えていかなければならないという意識はありますよ。福祉施設は税金泥棒なんて言われないよう、助成金だけで賄うだけでなく自らでお金を生み出して「産業」として頑張っていかなくてはならないと思ってます。

――しかし現状、福祉業界においてアダルトジャンルに進出しているのは「むく」さんだけだと思われますが。

木村:まぁ、うちは完全に福祉業界の異端児ですからね。でも、だからこそ日本唯一と胸を張れるわけです。でも、福祉施設という公共の機関がアダルト関連の許可を持っているなんて前代未聞ですよ(笑)。

――周囲との軋轢はありますか?

木村:まず、そこはうちの職員ですね。TENGAさんからの荷物が届いただけで、キャーキャー大騒ぎですから。副理事長が怒鳴り込んできたくらいですよ(笑)。

――まあ、そういったものに免疫がないなら仕方がないですよ。ほかに意識している団体はありますか?

木村:ホワイトハンズは、やっぱり意識してしまいますね。ただ、向こうは生身での支援で、「むく」はテクノロジーの支援という大きな差がありますが。あと、もはや今となってはライバルは完全にアダルト業界ですよ。いかにアダルト業界に打ち勝って、税金ではないお金で運営していくことが少子高齢化の中での鍵かな、と思ってます。もうね、本音を言えば税金だけで運営しているような施設は潰してしまえばいいんですよ! 自分たちで努力せずにダラダラやってる福祉ってすごく多いんです。

――その福祉業界の中で、「むく」以外の団体は障がい者の性についてどの様に考えてるんですかね?

木村:それについては一度アンケートを取ったことがあるんですよ。軒並み反対意見ばかりですね。

――そこには目を背けておいた方がいいって話になったんですか?

木村:いや。法で整備されていないことに対して福祉が対応すべきではないという意見が多いんです。

――ああ……。法律で障がい者の性についてなんて定められてないもんなあ……。

木村:ただ、先日NHKの「クローズアップ現代」で障がい者の性について取り上げられて、私が連絡をして見てくれた同業者は「真面目な問題なんだ」と考え直してくれたようで、文句を言わなくなりましたね。

――ああ! 私も拝見しました。非常に興味深い内容になってましたね。

木村:ただ、ほとんどの同業者は見ることすらしてないんだと思います。だから考えも変わらない。まあ、それでも私はやってしまいますけどね!(笑)

――そんなの関係ねえ!(笑)

木村:でも、秋葉原に行ってラブメルシーさんに足を運んで、「むく」の商品がちゃんと置いてあるところを目にすれば、否が応でも何か考えざるを得ないと思うんです。そして、これを作り出し続けなければ、結局どこかで鎮火してしまいますよね。

――そうですね。こうした活動は続けていくことこそが近道なんだと私も思います。

木村:それこそ、DMMさんとか大手のアダルト産業の会社がやればいいことだなんて声も耳にします。でも、それは違うんです。福祉業界がやるからこその意味があるんです。

――その通りです。障がい者への性の供給は、これまでのアダルト業界とはまた別の方向からのアプローチが必要になってくるはずです。

木村:作品は出し続けていかないと、数多のAVメーカーに埋もれてしまう恐れがありますから。それに、徐々にファンも付き始めているんですよ。健常者の方々が。

――おお! もしかして、イベント出展がここにきて効果を発揮し始めたんですかね?!

木村:そうですね。彼らの期待を裏切りたくないし、さらに彼らが「むく」の必要性を発信してくれたら言うことはありませんね。

――ちなみに、「むく」が発信してきた映像や視点入力センサー、TENGAのアタッチメントなどを実際に使われた障がい者の皆さんの声って拾えてますか?

木村:はい。全国の施設に協力してもらって、使用してもらった後にアンケートをとってますよ。ただ、反応は半分以上悪いですね。でも、これは職員の説明が要領を得ないせいもあると思います。

――ああ……職員の方も使ったことがなければなかなかレクチャーしづらいですよね。

木村:あと、女性職員に説明をお願いしたら「セクハラ!」とか、障がい者にレクチャーすることが虐待に当たるんじゃないかとか……。

――アンケートを読ませてもらいましたけど、これを見る限り、障がい者の方が「性に対して興味を持たないようにしている」というような頑なな姿勢が浮かび上がってきます……。

木村:やってみて、障がい者の人たちにも改めて「理解されないな……」と感じましたよ。ただ、法人のトップはすごく協力的なんですけどね。活動にも賛同してくれる人が多いです。ただ、やはり現場の職員には受け入れがたいようです。

――難しいところですね。ただ、このアンケートはすごい! おそらく全国でも初なんじゃないですか。

木村:TENGAさんも試みたそうですが、福祉施設が拒否をしたようです。この辺りに、うちが福祉施設だからこその強みがありますね。

――福祉とアダルトの融合が、これから障がい者の性にどのように作用していくのか……。今後の活動展開についても、逐一追わせていただきたいと思います。ありがとうございました!

NPO法人 自立支援センター むく

2000年に設立された障がい者の支援活動を行っているNPO法人。2016年より、障がい者への性に関する支援に本格的に着手。最新のテクノロジーと性を融合し、コンテンツの制作やテクノロジーの開発、 VR関係のシステムの開発も行なっている。