キス止まりだった、バツ2の神田とまなみ。神田の出張先のホテルに入った二人は、ぎこちなく様子を伺う。
神田はシャワーを浴び終え、髪を乾かし、ボクサーパンツを履くと、「じゃ、寝よっかな!」と笑って、ベッドに滑り込んできた。

「ん、これは、ぎゅってしていいの? されるの?」とまなみは期待したが、神田は一向に触れようとしない。照れているのだろうか、気が無くなってしまったのだろうか、添い寝要因が欲しかっただけなのだろうか。
まなみの心の師匠、元AV女優の峰なゆかが言う。
「ヤレるときにヤる」

まなみはヤケになって、ゆっくり、なるべく自然に神田に体を寄せた。神田は「ん、」と言って横向きになってこちらを見てくれた。「明日何時に起きるの?」「今日どうだった?」「疲れたよー、あいつがさあ」と、空白を埋めるように小さな声で話すうち、まなみは次第に会話を無視し、ふにゃんと、神田に柔らかいキスをした。

「あー、だめじゃん、彼いるんだろ?」
「いや、いないです」
「嘘つけ」

うっとりしながらディープキスをする。無防備になっていく。まなみは、神田の太ももあたりに手を伸ばして触れた。本当はもっと奥に手を伸ばしたいけれど、なんだか直接的すぎて恥ずかしい。すると、神田は急にぐっと上半身を起こし、まなみに覆い被さってまた口付けし、舌を絡めた。攻めていたつもりだったのに、急にそんなことをされると感じてしまう。神田の手が、まなみの股間に伸びてきた。

まなみは寝づらいベッドに縮こまり、「あー、肩いてえ、頭いてえ」と不満の気持ちでいっぱいになっていた。
まなみは何とか神田を気持ちよくさせようと、手コキやフェラに臨んだが、神田は勃起してもギンギンに固くは無かったし、まなみは濡れることができなかった。神田のどこか一歩引いた態度が、まなみに「感じて良い」という安心感を与えなかった。一応挿入をしたものの、ピストンできるほど固くなっていない、しかもあまり濡れていない、と互いに察知し、「なんか疲れちゃったね」とかなんとか言って中断し、二人はそのまま寝た。朝起きたら朝勃ちからの流れで挿入できるかな? とまなみは思ったが、そんなチャンスも無く神田は寝付いてから朝方まで大きないびきをかいて寝て、出社ギリギリの時間に起きて慌ただしく準備した。

「朝ごはんどこかで食べますか?」
「いや、俺はいいわ。このまま会社いく。」

カフェなんかで一緒にモーニングするのかなと思ったが、そんなことも眼中には無いようだった。なんだこれ。本当に、ただの添い寝要員じゃん。その気がないなら、家で寝る方が仕事の疲れも取れたわ。この持ってきた荷物、化粧品とかの重いお泊まり道具。服はまあ昨日と同じでいいか、と思い、翌日の分を持ってきていなかったので、仄かに昨日の体臭が残っていて気持ちが悪い。
あー、くっだらねえ。昨日夜中まで待ってたのは何だったんだ。そんなことなら、会社で仕事してるとか、さっさと帰れば良かった。神田はどうしても「自分が手を出した」という状況を作らないように警戒していたようだった。会おうと誘ったのも、「まあせっかく遠方に行くなら、俺の事が好きな添い寝できる女でも調達しようかな。」という考えが透けて見えた。

すべて神田の都合通り。楽しい飲み会をして、寝床にいけばとりあえず異性の寝てくれる女が居て、寝て起きて会社。そこに、まなみのである意味などまるで無かった。ヤル気はないよ? なに、ヤル気なの? ってか。会ってみたら、こんなんじゃなかった、ってか。くっだらねえ。
まなみは神田と別れると、体に悪そうなパンチの効いたものを食べてやりたくなり、朝から営業しているクソ安いラーメン屋に入って、半ラーメンと半チャーハンを頼んだ。映画「モテキ」で、麻生久美子がスカしたおっさんに抱かれたあと、馬鹿らしくなってそそくさとホテルを出て、朝から一人で牛丼屋で豪快に大盛りを頼む、その役になりきっていた。女優のふりをしていないと、心が折れそうだった。普段は大好きなラーメンだが、朝から食べるのはやはりきつかったようで、麻生久美子のように全部平らげることはできず、ラーメンもチャーハンも残してトイレに駆け込み、下痢をした。

くっだらねえ。ほんとくっだらねえ。昨晩から持て余したこの性欲どうしてくれんだよ。あー、今すぐ棒が欲しい。ディルドが欲しい。帰ったら即オナニーしよ。やっぱ、セックスは相思相愛じゃないと悲しいだけだな。相手に不信感持ちすぎて、セフレの関係性とか私には無理だ。そもそも、私、お泊まりとか嫌いだった。家に帰って一人で寝るのが一番好きだ。もう二度と会わねえわ。
そう心に決めるのに、神田の連絡先を、まなみは未だに消すことができない。もしかしたら、好きになってくれるかも? 抱いてくれるかも? そうでなくても、たまに心が通う瞬間があるし、繋がりが無いと不安になる……そんな期待をしている、バカ女なのだ。

三尾やよい

悪趣味が高じてフリーライター。エロ・グロ・ゲテモノ。アダルト系WEBコラム連載/ニュースメディア翻訳ライター。毎日がFernweh(;-;) 将来の夢はベルリンで引きこもって夜な夜なテクノ鑑賞。