東京女子エロ画祭

3月4日、入谷のSOOO dramaticにて「東京女子エロ画祭」が開催されました。今回で5回目の開催となった当イベントは、脚本家で作家の神田つばきさんと映像監督の安藤ボンさん、グラフィックデザイナーのもも小春さんが主催が主催。女性の考える性やエロスを表現した公募作品の中から、会場投票でグランプリを選出する公開アートコンペティションです。今回は11作品を来場者全員で鑑賞しました。

先に総評を述べてしまうとすれば、先日のイベント(第4回東京女子エロ画祭グランプリ作品『おとなのおもちゃ』を見て、忘れてはいけない何かを取り戻したライターの話。)で鑑賞した第4回作品の多くが「エンタメ性」に富んだものであったのに対し、第5回は「アート性」を強く感じさせる作品が多かったように思えます。それこそまさに「東京女子エロ画祭」が掲げる理念をしっかりと受け継いだ、自身の中から沸き出てくる”エロス”の表現に特化した作品であり、「女性の数だけエロスが存在する」ことを改めて私の中に印象づけてくれました。その中でも、私が個人的にひじょうに興味深く見せていただいた3つの作品について感想を述べさせてもらいたいと思います。

『毛まみれヘブン』

やまだみのりさん作の6分間のアニメーション作品。同棲中(?)のカップルが、可愛らしいウサギのキャラクターで描かれています。しかし、彼氏の一挙一動についイラっとしてしまう主人公。怒りを感じるとわき毛がニョキニョキ伸びて、そのたびにお風呂で処理をします。
ワキ毛は本来は、心臓部近くの血管を守るために存在するものと言われています。しかし女性にとってのワキ毛は、怠惰の証・無駄なものの象徴でもあります。自分の心がささくれ立った時に伸び出す主人公のわき毛は、彼女の負の感情の現れであり、それを剃ることは負の感情を無理やりそぎ落とす行為なのでしょう。

排水溝に流れゆく処理されたわき毛=負の感情は、決してキレイサッパリ流れゆくわけではありません。蓄積された負の感情の果てに、女性は大いなる変容を遂げます。なぜ好きな相手と一緒にいるのに、そんなことになってしまうのか……もしかしたら男性には理解できないかもしれません。でも女性にとって「あなたが嫌い、だけど愛してる」という感情は、決して矛盾したものではないのです。ラストシーンの主人公の姿に、自分自身を重ねたことは言うまでもありません。

『Female or Mother』

菅沼絵美さん作の2分24秒の映像作品。「女は母である前に女である」ということを、駅のホームの向かい側に現れた青年と対峙した中年女性の姿を通じて訴えかけてくれました。

娘と一緒に出掛けようとしているその女性は、若く美しい男性の姿に「女」である自分を意識し、何もつけていなかった唇にそっと紅を塗ります。少しカサついているようにも見える素の唇に色をのせようとする姿に視線は釘付けになりましたが、その後の口紅の色を見てハッとました。それは正直に言ってとても淡いピンクで、決して目立つような色ではなかったからです。
けれど、これこそが「母でもある女」のリアリティのように感じました。口紅を塗って自分の中の女性を意識したとしても、派手な色を塗ることはない。あのピンクが彼女の”女”の精一杯だったのだと。そして、口紅を塗った彼女のことを、一緒にいた娘は決して気づかないのではないかと。

余談ですが、専業主婦だったうちの母はいつも真っ赤な口紅をしていました。夫であった私の父が「赤い口紅をつけてる女は色っぽい」と常に言っていたからです。男性から”女”を意識される色の象徴として、私の中の”女”の口紅は赤なんだと思います。

『自撮りカレンダー熟女』

マキエマキさんによる12点の写真作品。今回のグランプリ受賞作です。「女として枯れる前に、性の対象として見られる自分を残しておきたい」――そんな思いからマキエマキさん自身で撮影したセルフポートレート。正直に言って、圧倒されてしまいました。

「東京女子エロ画祭」は、女性の視点でのエロスを表現する場です。しかし彼女の作品は、どれも男性の目線を意識し、男性の欲望のために写したとしか思えない艶やかなものばかりでした。一見すれば「男目線の作品」と受け取られかねないでしょう。けれど、この作品を撮ったのは、誰でもない女性のマキエマキさんです。そこに女の性の奥深さがあり、”女性の視点”とはいったい何なのかを痛切に感じさせる作品になったのだと思います。

マキエマキさんは「男性に性の対象に見られたい」という欲望を、12枚の写真の中にぶつけていました。それは、ある意味では女性のエロスの根源とも言える欲望であり、本当に素直に率直に「エロス」を表現していたように思います。それに加えて、観る者を楽しませるエンタメ性にも溢れた作品でもあり、グランプリ受賞は大いに納得でした。

「東京女子エロ画祭」は、女性のエロスを基軸にしたイベントです。しかし、決してそこに定義があるわけではないのです。自分の中にも確実に存在する、女性であるからこそ感じられる性とエロス。それに対峙する機会を与えてくれる稀有な場所として、今後も「東京女子エロ画祭」が開催され続けるよう、切に願います。
(もちづき千代子)

東京女子エロ画祭

女性の手によって生み出されたエロスイメージの可能性を探る創作活動の発信と支援を目的とし、2010年から公開作品コンペティションとして開催されている。