懲りない私は、最終オーディションのため、とある駅の待ち合わせスポットにいた。
男性スタッフが到着し、どこかに潜んでいた応募者女性がワラワラと集まり、名簿で名前を点呼。私以外の応募者は、みんな「モデルの卵」、「ダンサーの卵」、「売れない地下アイドル」なんかで、卵であっても売れてなくても異様にキレイであり、私が「下ネタ」ひとつで選ばれたのだということは一目瞭然だった。

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みんなで、面接会場の居酒屋に歩く。
居酒屋に到着すると、テーブルの上には食器と一緒に応募者の名前の書かれたメモ用紙が置かれていた。
女性3人に対し、面接官は2~3人。10分程度話したら、応募者が席を移動して、すべての面接官と話す。

面接官「なんで応募したの?」
三尾「に……人間の性愛を学びに来ました……(小声)」
一次面接で「真実の愛を探しに来ました」と言い切った他は何も言わなかった応募者がウケていたので、それの真似をして言ったのだが、周りのあまりのウェイ感に気圧され、キッパリと言うことができなかった。一番恥ずかしい状況だ。
面接官「え? せいあい?」「なになに、難しい分かんない」「性愛?」
40代の面接官女性は眉をしかめる。

面接官「で、今は会社員をやってると。」
三尾「はい。で、経歴書にも書いたんですけど、アダルトライターが今一番頑張ってることで」
面接官「アダルトライター?」
三尾「はい。何十個もアダルトグッズを試してレビューする、みたいな」
「へえー!!」と、先程まで「こいつ大丈夫かな」という顔をしていた女性面接官が、目を輝かせた。隣の30代くらいの男性面接官が割り込む。
面接官「えー、例えば、どんな」
三尾「今日持って来たんですけど」

いざという時に自己アピールができるよう、普段から持ち歩いている「TENGA Δ Delta」を鞄から取り出す。
「リモコンみたいなスタイリッシュな見た目なんですけど、下のスイッチを回すと振動して、ヘッドを回転させると色んなところに当てやすいっていう」
と言ってヘッドを回転させると、「おぉ〜」という声があがる。
他の応募者が「えっ? これどこに何するの?」というと、別の子が「下とかに当てるんだよね!」とフォローしてくれた。アダルトグッズユーザーの踏み絵のようだ。

面接官「あー! だから、性愛を学びにって言ったのね」
三尾「はい。あと、応募したのは、書いてる官能小説のネタ探し目的でもあります」
面接官「でもこの番組、そんな露骨なエロは無いよ?」
三尾「いや、官能小説は妄想の世界なので、異性と関わる刺激があるだけで良いんで」
面接官苦笑い。

面接官「じゃあ、この中で、好きな人がかぶるときも出てくると思うけど、恋のライバルになりたくないのは? せーのっ」
他の応募者2人から、指を差された。
「こういうクセのある人ってライバルになると……あっ! ごめんね!! クセあるとか言っちゃって!!」
フォローしながらディスられた。

次のテーブルに回る。再びバイブの解説をさせられる。
面接官「どんな記事を書いてるんですか?」
私は、「膣に異物を挿入するべからず。~やっぱりディルド、100回挿れてもだいじょーぶ!~」をスマホで見せる。面接官が読み上げる。

「世の中には沢山の棒がある。多くの女性器にとって初めての『棒』は、自身の指では無いだろうか。しかし、指では自分の快感スイッチを押すのには短すぎる。向上心と好奇心のある人は、身近にある大きめな棒、ボールペンや電動歯ブラシの持ち手などを手に取るようになるだろう。……へー、哲学だね」

哲学とは何か、という哲学が頭の中で始まった。
エロ記事の朗読はとても恥ずかしかったけれど、毎日ひとつ恥ずかしいことをして、自分の箍を外していくのが私の日課だ。面接官がまたひとつ、私の箍を外してくれた。
そうしてテーブルごとにバイブを披露した私は、一緒にテーブルを回った2人からすっかり距離を置かれ、最終オーディションを終えた。

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それから数週間後。
わたしは面接に落ち、またいつもどおりの日常を過ごすことになった。この面接を通し、私は学んだことがあった。
それは、チョー可愛い子は、チョー努力してるということ。みんなキレイになるために、平気で断食したり、ハイヒールで何キロも歩いたりしている。彼女たちに触発されて、私も1.5日間くらいだけ美意識が高まった(高まっただけで何もしなかった)ので、私は今後ダイエットがしたくなったら、また何かのオーディションに応募してみようかなと画策している。

三尾やよい

悪趣味が高じてフリーライター。エロ・グロ・ゲテモノ。アダルト系WEBコラム連載/ニュースメディア翻訳ライター。毎日がFernweh(;-;) 将来の夢はベルリンで引きこもって夜な夜なテクノ鑑賞。