先日、ナンパ塾の生徒に遭遇した。
数年前、男性から「連絡先教えてください」と駅のホームで言われたとき、恥ずかしながらめちゃめちゃ喜んた。それまで、女として見られている実感がなく、女性性としての自分に自信がなかった。それが、「話しかけてやってもいい女性」として見られたことが嬉しかったのだ。
しかし、「ナンパされた」なんて言ったら自慢と捉えられ、同性から袋叩きにされる。勘違い乙。ブスとか微妙な女ほどナンパされる。だらしなさそうな女がナンパされる。ネイルが剥げてて髪色がプリンの女がナンパされる。ここらへんは、大体の「ナンパされる女の特徴」と題されたキュレーション記事で書かれていることだ。まるで、ナンパされた女が悪者のよう。
でも、微妙な女とか、だらしなさそうな女とか、美人はナンパされないとか、そんなことはどうでもいい。美人でないことなんて元から知っているし、ネイルが剥げて髪色がプリンでカバンがパンパンのだらしのない自分と何十年も付き合ってきた。どんな形容詞が付こうとも、「女」と認識されただけでモテない女は嬉しいのだ。
ここで、私はナンパをする男の気持ちを細やかに知りたくなった。「ナンパ 気持ち 心理 ブス ナンパしやすい ついて行く 行かない ヤリモク」。思いつく限りの様々な単語で検索した。はじめは上に挙げたような「微妙な女ほどナンパされる」とかいった、つまらないキュレーション記事ばかり掴んでいたが、ある時こんな記事に出会った。

「今日は渋谷で番ゲ3、即1でした」

番ゲ? 即? 何だろう???
ブログのタイトルは、ナンパ師のナントカ。
調べてみると、この世には自分の知らなかった巨大なジャンルがあることに気づいた。「ナンパ師」というライフワークだ。ちなみに「番ゲ」や「即」の意味は、「ナンパ師 業界用語」とでも検索してみていただきたい。

ナンパ師のブログは、ヤれた人数ばかり数えているものやお酒の力を使ったゲスいもの、丁寧にひとつひとつのセックスを重ねて反省点を書いているような、真面目(?)なものまで多種多様。ナンパ師のブログにすっかりはまったものの、 実物にはなかなか出会えず。稀に男性から声をかけられた時は、「ナンパブログしてますか!?」と聞いて、「ハァ?」という顔をされていた。文学のないナンパ師に用はない。
しかし、数年越しにやっと、ナンパ塾に熱心に通うナンパ師との接触に成功した。

純一(仮名・36)
青森県出身。会社の都合で数年前に東京に転勤。喫煙所で話しかけてきたナンパ師の師匠が開講しているスクールに入会。引っ込み思案な性格を直したいのと性欲の旺盛さから、熱心なナンパ塾生となる。

ナンパ師 緊急インタビュー

――もしかして、通ってるのは、最近ニュースを賑わせたナンパ塾ですか?

純一氏(以下、純一):違いますね。あれは存在も知らなかったです。ナンパ塾は無数にあって、自分のところは誠実系だと思います。

――なぜ入ろうと思ったのでしょうか?

純一:コミュニケーション能力をあげたいというのが一番です。入る前はクソ真面目なつまらない奴で、とても人見知りしてました。

――会費はいくらなんですか?

純一:月に5000円ですね。入会時は2000円でしたが、長くなるとあがっていきます。

――ナンパ塾はどこで行われるのでしょうか? 座学もしますか?

純一:貸し会議室で座学をすることもあります。あとは立ち飲み屋で飲みながら、「ほら、ナンパしてみなさい」と言われる実技だったり。師匠を呼んで、ホテルなどでフェザータッチや耳責めの実技講習をしたりもします。

――ナンパ師メンバーの外見や雰囲気はどんな感じでしょうか?

純一:自分が所属しているところのメンバーはみんな大人しめでいい人ばかりです。チャラい系は一人もいない、珍しいメンバーかも知れないですね。入会当初に清潔感がない人や太った人でも、そのサークルで磨かれるうちに清潔になったり痩せていっています。

――その仲間との仲はどうでしょうか?

純一:みんな仲がいいです。そのメンバーだけでお花見をしたり。結局、行ってもナンパ目的だけど(笑)。

――今までの戦績はどうですか?

純一:3年やってて約20人。ナンパ塾に入る前は3人でした。

――ナンパが成功する時ってどんな時ですか?

純一:自分の欲求ではなくて相手の欲求が満たせた時です。例えば、相手が疲れていて、寂しい思いをしているときに懐に入るとか、聞き役に徹するとか。「自分」が全面に出ている時は成功しないですね。

――入ってよかったことはどんなことですか?

純一:人見知りって、どうしてするか分かりますか? 自分が傷付きたくない、その自己保身の気持ちがあるからなんです。でも、一人に無視されて世界がどう変わるかというと、まったく何も変わりません。それはナンパに限らず社会人生活でも一緒。「人に雑な扱いをされたくない」という自己保身のプライドをなくせば、生きるのが楽になります。ナンパ塾に入ったおかげで、実生活のコミュニケーションにもかなり活かせています。

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そんなナンパ師の純一さん、当初は道端で声を掛けられずにつっ立っているだけの「坊主」だったそうだが、今ではナンパ塾の後輩に指導をすることも増えてきたという。ナンパ塾は、どうやって騙してヤルかという世界ではなく、一流の営業マンになるべく自己を研鑽するような、とても意識の高い場所だった。

三尾やよい

悪趣味が高じてフリーライター。エロ・グロ・ゲテモノ。アダルト系WEBコラム連載/ニュースメディア翻訳ライター。毎日がFernweh(;-;) 将来の夢はベルリンで引きこもって夜な夜なテクノ鑑賞。