【A-Lady】モデルとの駆け引きによって縛りの美しさを体現する緊縛師、荊子

派手な縛りを見せるより、縛ることで感情や表情の変化を引き出し、見せたい。

男の世界といわれる緊縛のジャンルで、女性縛師として活躍する荊子さん。女性が女性を縛るなかで生まれるエロス。
しかし、緊縛の精神性を重視する彼女は、もう一歩先の世界にそのまっすぐな視線を向けていました。

――縛りの道に入ったきっかけは?

荊子:専門学校で現代アートを専攻していたのですが、『包む』ということに興味があっていろんな作品に挑戦していました。そのうち、人を梱包したらどうなるんだろうと興味が広がったので、知人に教えてくれる人を紹介してもらいました。

――それまでは縛りに対してどんなイメージを持っていましたか?

荊子:自分とは無縁だと思っていました。いまも多くの人が、縛り=SM、または女王様と結びつけますが、私のイメージもそうでした。縛りをやりたいけど、SM嗜好はないし女王様にもなれない。当初はそんなジレンマがありましたね。

――縛師といえば男性というイメージがあります。

荊子:当時もいまも、プロの女性縛師は片手で数えられるほどしかいません。縛る過程においてどうしても物理的な力が必要なシーンはあるので、男性の世界とされているのも納得できます。縛られている女性がいて、その隣にいるのが男性なら、それだけでエロティックな絵になりますが、女性同士ではなかなかそれを演出しにくい。これが女王様でもわかりやすい絵になるけど、そうではない私が、どう魅せていくのか……長らくの課題でした。

――どうやって自分の世界を作り上げていったのでしょう?

荊子:ある時、雑誌をめくっていたら、ものすごくカッコイイ縛りを見つけたんです。その人はAVの制作会社も運営して自分の作品を撮っていたので、彼の縛りを間近で見たい一心でADとして入社しました。この頃には、縛りがおもしろくなっていたので、極めてやろうと覚悟を決めていましたね。そこで「考えるな」と習いました。パフォーマンスするときに、縛り方も音楽も吊るすタイミングもぜんぶ決めている人がいますが、私は「きょうは猿ぐつわなど顔にフォーカスをあてた縛りにしよう」ということぐらいしか決めていません。がちがちに決めこんでいても、モデルさんのコンディションや場の雰囲気に左右されるものだからです。そのときどきで生まれる流れやコミュニケーションに重きをおけば、縛りだけでなく表情の変化なども見せられますから。

――2012年にはドイツでパフォーマンスをされましたね。

荊子:現地でモデルを務めてくれた女性は、恋人と緊縛プレイを楽しんだことはあるようですが、私が彼女を背中から抱きすくめて縛りはじめたら、スッとその世界に入ってきてくれました。彼女の表情が変わった瞬間、会場の空気も変わりました。こうした機微を伝えるには、オーディエンスが少人数で、精神的なやりとりも説明しながら見せていくというパフォーマンスが最適ですね。

――今後の目標はありますか?

荊子:緊縛をアングラやエロスの世界だけで語るのではなく、陽の当たるところで鑑賞できるもの、話せるものにしていきたいですね。ほの暗さのなかにある淫靡さを大事にすると同時に、そうしたオープンな側面も追求していきたいです。

【A-Lady】モデルとの駆け引きによって縛りの美しさを体現する緊縛師、荊子
緊縛師 荊子

学生時代に緊縛と出会い、緊縛師・雪村春樹氏に師事。SMラブコメ映画『ナナとカオル』(2011年) やVシネマ、AVで緊縛を担当する。女性のみで制作された「新世界」シリーズでも作品を披露。女性を対象にワークショップやイベント、個人調教も行なっている。