業界のトップを走り続けるものづくりの達人に聞く、日暮里ギフト 奥伸雄社長

電動こけしが大ブーム 業界の黎明期を語る

奥社長がアダルトグッズ業界に入ったのは、いまから、6年前のこと。昭和年代後半から登場したビニ本の影響でアダルトグッズショップの客層が広がり、業界が隆盛していた頃のことだ。

奥伸雄社長(以下、奥):上野の卸問屋『寿屋』で働いていました。当時はまだオナホールなんて影も形もなくて『電動こけし』と呼ばれたバイブが主流。いまの人たちは知らないでしょうが、「アラビア人形」や「熊ん子」という商品がヒットしていました。

ちなみに、この「アラビア人形」や「熊ん子」はいまのバイブに続く流れを生み出したエポックメーキング的な商品である。アダルトグッズの現代史があるならば、現在への過渡期と呼べる時代になるだろう。奥社長は卸問屋に3、4年ほど勤めた後、独立して卸問屋の「日暮里ギフト」を設立した。

奥:当時のアダルトグッズ業界は、いまと異なり、一般的な社会と深く隔絶していました。元々、素性の分からない人たちを大元にして発生した業界なので仕方がないことですが。新宿や渋谷などの繁華街の外れにひっそりとショップがあって、薄暗い店内にやり手ババアが座っていて、買うまで店から出さないような(笑)。

ドン・キホーテのような一般店で手軽に購入できる現在からは考えられないが、奥社長はそんな状況でユーザーに訴求するグッズを生み出すべく、奮闘を繰り返してきた。

奥:思い出深い商品といえば、「あこがれのセーラちゃん」というオナホールでしょうか。メーカーさんと共同で開発したのですが、爆発的にヒットしました。おそらく、オナホールが浸透していくキッカケになった商品だったと思います。まあ、売れたことでメーカーさんが続編の制作に意欲を燃やし、もう難しいだろうと途中から手を引いた私を尻目に、次々とシリーズ作品を粗製濫造していたのも懐かしい(苦笑)。

155名器の品格

つねに新しい発想を 考えるのがものづくり

そして07年、奥社長は会社の代名詞的な商品となる「名器の品格」を生み出している。高級オナホールを桐箱に入れるという常識外れの発想で業界やユーザーに衝撃を与え、大ブレイクした逸品だ。

奥:廉価化の傾向にあったオナホールで高級品を作ろうと思ったのが開発の発端です。まずは素材にこだわり、よりリアルな挿入感を出すために、それまで硬めだった素材を柔らかくして、内部の構造にも工夫を凝らすことにしました。それだけではインパクトが足りないという思いで悩んでいたところ、もうひとつのウリとして、外装にもとことんこだわって桐箱に入れたらどうか、というアイデアをひらめいたんです。
ただ、これまでに前例のない桐箱を使うということは、正直なところ冒険でしたが、自分のなかで売れるという確信は十分にありましたね。そして、蓋を開けてみたら予想を超えて売れてしまい、桐箱の生産が追いつかなかったほど。あれはメロン用の桐箱なんですが、当時は月に6,000個くらい必要で、業者さんは悲鳴を漏らしていました。

この「名器の品格」に続き、人気AV女優とタイアップした「名器の証明」というシリーズ作品も売れに売れている。この「名器の証明」も9シリーズが発売されるほどの人気だが、このような売れる商品を生み出す秘訣はどこにあるのだろうか?

奥:毎日、つねに新しいアイデアを考えています。新商品の企画やネーミングなど、若い人達に負けないよう悪戦苦闘しています。さすがに萌えキャラの商品企画を出すのは難しいですが(笑)。新たな商品を発売するとき、自分のなかで『100%、売れる』という確信を持てるまで練り込む。中途半端なものを出しても、ほとんど失敗しますから。考えて、考えて、考え続けるというのが、ものづくりに携わることの楽しさでもあり、難しさでもあると思いますね。

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オナホールに新しい革命を起こした二次元キャラをイメージしたオナホたち。

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シンプルなデザインと程良い太さが超人気のロングセラーバイブレーター。パール付きとシンプルタイプ各4色。

厳しさをます現状と路面店への思い

30年以上にわたってアダルトグッズ業界を見続けてきた奥社長に、市場の現状を聞いてみた。

奥:メーカー、問屋のほかにAVメーカーの進出で、国内市場は飽和状態。競争の激化に不況も重なり、作り手は厳しい。そんな状況もあり、最近活性化している海外市場への視点が、これからますます重要です。とくに日本人と体格的に近いアジア圏で、どう日本のグッズを販売するかというのがポイントです。例えば、海外市場は男性使用のオナホールよりも女性が自分で使用するバイブの需要が高く、そこに日本が圧倒的に強いオナホをどう売っていくのかというのも、大きな課題だと考えています。

――とはいえ、奥社長は国内市場をおろそかに考えているわけではない。

奥:アダルトグッズ業界は10年ほど前がピークで、そこから”右肩下がり”の状況。路面店はどんどんと減少していき、ネットも新規参入が難しいほど確立された感があります。しかし、作り手側が飽和状態ということは、買い手市場ということでもある。自分の地域で売れる商品を見極め、メーカーや問屋にどんどんと意見を述べることができます。しかし、昔に比べると、作り手と売り手が乖離している印象は否めません。かつてはショップサイドからユーザーの反応をよく聞いていましたが、最近はめっきりとなくなりました。委託が主流になっていることもありますが、顧客のニーズを把握して、作り手にアピールしてくれたらうれしい。業界全体が底冷えしているからこそ、売り手と作り手の密接な関係が重要になってくると思います。

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マスクとタイツで進化したエアダッチ「宇佐羽えあ」は、アニメファンに人気。お手軽なミニ電マは女性に大好評。

奥社長には、ここ最近になって、ある思いを抱いているという。

奥:日暮里ギフトは路面店さんに今日まで育ててもらったのだから、何かの形で恩返しをしたい。多少自分が傷付いても、何か画期的な方法はないのかなぁと真剣に考えていますよ。

そう言ってほほえんだ社長の優しい瞳に、業界トップを走り続けてきた経営者の強さが見えた。

業界のトップを走り続けるものづくりの達人に聞く、日暮里ギフト 奥伸雄社長
グローバル化への対応
アジア圏の市場を重要視しているという社長の本棚には中国語の辞書や語学本がズラリ。現地の人間と商談するときも、より密な関係を作ることができるように、との努力は怠らない。
ちなみに、本誌の別コーナーで紹介している海外イベントにも、日暮里ギフトの商品が展示されていたぞ。

業界のトップを走り続けるものづくりの達人に聞く、日暮里ギフト 奥伸雄社長
外に質素な社長室
業界最大手とは思えないほど、社長室はあっさりとしたもの。在庫商品が並んでいるなかに、社長のデスクや事務機器が置かれていた。社長は企画から営業までをこなしているとのことで、豪華な社長室にふんぞり返っていては仕事にならないのだろう。ものづくりに携わる人間の奥深さが感じられる。

日暮里ギフト 奥伸雄代表取締役社長

東京のアダルトグッズ卸問屋での勤務を経て独立後、同社を設立。「あこがれのセーラちゃん」や「名器の品格」、「名器の証明」など、これまでに数々のヒット商品を生み出し、同社を業界最大手にまで成長させた。また、海外市場へもいち早く着目。とくに「名器の証明」はアジア圏でも、オナホユーザーから絶大な支持を受けている。