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15人15様の性

不倫の恋に落ちた15人の人妻に取材を重ね、その心の機微から、めくるめく官能シーンまでを女性ならではの筆致でルポルタージュした『妻たちが焦がれた情欲セックス』。著者の加藤文果さんに、女性と不倫、そして性、さらにはいま関心を寄せているというストリップについてお話をうかがいます。

――『妻たちが焦がれた情欲セックス』は、女性読者からの反響が大きかったそうですね。どんな声が届きましたか?

加藤文果(以下、加藤):リアルな女性たちに取材した作品なので、女性が共感してくれるのはとてもうれしいですね。当初は不倫で揺れ動く心や戸惑いに反響があるだろうと予想していたのですが、実際には官能シーンに刺激を受けた方が多いようです。自分が体験したことのないシチュエーションでの性愛にぐっと来るというのは、みなさん知らず知らずのうちにそういう願望を胸に宿しているのかもしれません。

――取材対象の人妻さんたちとは、どうやって出会われたのでしょうか? ストーリーのある方々ばかりですね。

加藤:一度、取材した方が『実は友人もいま不倫中で』『セックスライフで悩んでいて』と紹介してくださるので、どんどんつながっていきました。不倫の恋は、誰かに聞いてもらいたくても身近な人には話せない類いのものなので、胸のうちですごく熟成されるのでしょう。私が耳を傾けた途端に、わーっとあふれてくる感情に押されるようにしてお話される方が多かったです。私を信頼してとても大事な秘密を打ち明けてくれるのですから、宝物を分けていただいたかのような気持ちになりました。

――とはいえ、本書は不倫を推奨するものではないように見えます。かといって、否定されているわけでもありません。

加藤:不倫をしないで済むなら、それがいちばんではないでしょうか。夫や子どもと愛情で結ばれ、毎日が充実していて、不倫が入り込む隙なんてまるでない人生は理想的です。でも、いろんな事情で心が満たされなかったり、性的に夫と長いことすれ違っていたり……という状況下でもし別の男性と出会ってしまったら、関係がはじまるのはむしろ自然なこと。人妻さんたちを見ていて、そう感じました。性生活が思うようにいかず、気持ちもすれ違ったままという生活を続けているうちに、自分には何も価値がないと思いこんでしまった女性が、仕事や子育て、趣味で自信を回復できることもあれば、性を通じて救われることもある。不倫はその選択肢のひとつなんです。

――不倫によって自己を回復し再び生きる喜びを感じるようになった人妻さんがいる一方で、それとは逆に、不倫相手と出会って新たな苦しみに出会った人妻さんもいました。

加藤:私もそう思ったので、『不倫の恋を知らなかったころに戻りたいですか?』と尋ねたのですが、みなさん一様に『戻りたくない』と即答されました。たしかに不倫は世間では褒められたことではありませんし、自分自身も無傷ではいられません。でも、受け身でいることをやめ、自分の性に対して一歩踏み出したことを後悔している人はいないんです。

――行動を起こすことで、変われたんですね。

加藤:ひと昔前とくらべて、今は情報を得る機会が格段に増えましたよね。だから満たされない毎日を我慢しなきゃと思うのではなく、もっと別の、自分らしくいられる世界がどこかにあるのではないかと考えて、新たな扉を探す人が多いように見えます。その扉というのは、ラブグッズかもしれないし、性癖が合うパートナーかもしれないし、愛情をわかち合える恋人かもしれません。それは人それぞれですが、解消する方法がいくらでもあるということに、女性たちは気づいたんです。自分にはそれだけの選択肢がある、と思えるって、とても心強いことですよね。『妻たちが焦がれた情欲セックス』では15人15様の性を紹介しましたが、手に取ってくださった女性たちにとって、これが何らかのヒントやきっかけになればうれしいです。

昭和の娯楽文化・ストリップ

――作家・加藤文果の現在の活動を教えてください。

加藤:ストリップへの関心が高まって、とうとう劇場で受付のお仕事までするようになりました。裏方になって劇場の空気を感じると、観客として外から見るだけではわからない、ストリップの〈いま〉がお客さんの表情からも伝わってくるんです。男性のための昭和の娯楽文化が、いまでも息づいているのを感じます。全国の劇場もどんどん減っていますし、飛び込むならいましかない! と思いました。

――ストリップのどこに惹かれたのでしょうか?

加藤:最初はトップの踊り子さんによるすばらしいパフォーマンスに夢中になったのですが、そのうちストリップ特有の猥雑で、ピンクな世界観に惹きつけられていきました。かつてはステージ上で男女の行為をショーとして見せていた時代もありましたが、いまはもう実現不可能です。でも、そういうショーに対する観客の期待感とか、踊り子さんとの駆け引きとか、劇場にはまだ当時の気配が漂っています。それを直に感じたいんです。

――今後そうした雰囲気は消えてしまうのでしょうね。切ないことです。

加藤:ストリップにかぎらず、いまこうした猥雑な文化がどんどん淘汰され、浄化されて、〈なかったこと〉にされつつあります。でも、いかがわしいものに対してワケもなく心がざわざわし、どうしようもなく惹きつけられることってありますよね。そうした人間くさいものをすべて排除し、封じ込めてクリーンな社会にすることへの違和感が、私はどうしても拭えません。だから、いま見ておけるものはできるだけ見ておくつもりです。

いずれ、ストリップ劇場を通じて肌で感じた性愛の姿を取り上げてみたいという加藤文果さん。今後のご活躍も期待しています!
(森友ピコ)

不倫の恋に落ちた15人の人妻たち
加藤文果/Fumika

官能ルポ作家。現代の恋愛、セックス事情やラブグッズの取材を重ね、女性のリアルライフを描いたルポや官能作品を発表。著書には『妻たちが焦がれた情欲セックス 』『満たされたい私たち―OL夜のヒミツ箱』『私は人妻風俗嬢』など。最新刊は『妻たちが焦がれた情欲セックス』(イースト・プレス)。電子書籍では『女がエロくてなぜ悪い 恋する女性の快楽白書』(KADOKAWA)のほか、ティーンズラブ小説も多数執筆。