一つの玩具から紡ぎだされる、女性たちの物語。新しい欲望。
多方面で活躍する作家・岩井志麻子先生による読み切り小説。

岩井志麻子の千夜玩具物語

親が勧めるから、地元の短大に入った。卒業だけはできたけど、親が望むような会社には入れなかった。一応は就職浪人。
でも、そんながっつり働きたい気持ちもない。それでキャバでバイトしてるけど親にはレストランだって嘘ついて、適当に夜遊びしてる。
一回りくらい上の彼とは、店で会った。普通に見れば客と嬢だけど、私はとことんバイト感覚だから店でナンパされたって感じ。
彼はまあまあお金持ちだし大人だからエッチも丁寧で上手い。私が溶けてなくなるほど、足の指まで舐めて可愛がってくれる。

高校のときからずっと同世代の彼氏ばかりで、みんな回数だけやるのに必死だった。
私はAVを見て、しゃぶり方や喘ぎ声なんかもそれなりに勉強したけど。自分はいつも演技してるとわかってた。そんな、頭真っ白とか潮を吹くとか失神とかあり得なかった。
彼によって初めて、イクっていうのを覚えた。あそこの中がきゅうっと収縮して、私の意思と関係なく痙攣して、彼を締めつける。気持ちよさを通り越して、ちょっと怖いみたいな。

そんな彼とこの前初めて、ストリップ劇場に行った。そこで私は思いがけず感動したし衝撃も受けた。
なんとなく、下品な男達の前で裸のお姉さんが適当にくねくねしながら体やあそこを見せてる、くらいにしか思っていなかったのに。
舞台もダンスも本格的、観客も真剣に見てて行儀いい。何より、きれいなお姉さん達の体が素晴らしかった。見せるための、そして魅せるためのプロの体だと心打たれた。
そして私は初めて、生で女の人のあそこをまじまじ見た。みんな形が違うという、考えてみれば当たり前のことにも感動した。ほんと、剥き身の貝みたいだ。
隣の彼に、そっと耳打ちされた。体は負けてるけど、あそこのきれいさはお前の勝ちかも。

その夜、ラブホのベッドで彼に冗談半分、本気半分で、私もストリッパーになってみたいといった。私の名前は美々と書いてミミだけど芸名はビビでどうかな。
彼の前で裸で踊ってみたけど、それでは金は取れないとはっきりいわれた。

そうして彼は、カバンから道具を取りだした。今までにもいろいろ道具は使っていたけど、その「nemo CHARGE」は初めて見るものだった。
彼の親指くらいのローターを私の中に入れて、私のあそこくらいのリモコンを彼が持つ。
どちらもピンクで見た目は可愛いのに、振動と刺激は強烈だった。あそこだけでなく全身に甘い電流みたいなものが走って、本気の声を上げてしまった。

ほら、ストリッパーになったら多くの人の前で踊らなきゃならないんだから。
そう彼に命じられ、あそこにローター入れたまま繁華街の真ん中に連れだされた。
10メートルも離れている彼のボタン操作で踊らされる。
腿まで濡れているのを感じながら、私はあまりの快感に踊れなくなってその場に崩れ落ちた。ダンサーとしては失格だ。

岩井志麻子
岩井志麻子

1964年、岡山県生まれ。『ぼっけえ、きょうてえ』(角川書店刊)で第6回 日本ホラー小説大賞、2000年には同作品で第13回 山本周五郎賞。2002年、『岡山女』で第124回直木賞候補となる。同年には、『trái cây〔チャイ・コイ〕』で第2回婦人公論文芸賞、同作品は2013年に映画化。
また、近年は東京MXテレビ『5時に夢中! 』木曜レギュラーコメンテーターほか、日本テレビ『有吉反省会』への出演など、強烈なキャラクターを活かした映像出演など幅広いジャンルで活動中。