一つの玩具から紡ぎだされる、女性たちの物語。新しい欲望。
多方面で活躍する作家・岩井志麻子先生による読み切り小説。

岩井志麻子の千夜玩具物語

中学生くらいの頃からもう、椎奈ってモテるよね、ともいわれてたし、椎奈は軽く見られるよねぇ、ともいわれてた。
専門学校を出て、画材店で店員しながらときどきイラスト仕事をもらえるようになった今も、ずっとそんな感じ。
ついに20代も後半に入ったけど、いまだに学生に間違われる子どもっぽい顔。ハイヒールはいてやっと平均身長に追いつく小柄な体なのに、胸は平均を上回るFカップ。
つまりスタイル抜群の美人じゃないけど、ぶっちゃけ男がもっとも好む見た目だ。
だから、モテるのも軽く見られるのも本当。それをちゃっかり利用してるのも、否定できない。仕事をくれるのはみんな、私に下心ありの男ばかりだし。

だけど、そんな安易にやらせたりしない。高校の初体験から今まで、ちゃんと交際した五人しか経験はない。簡単そうで簡単じゃない、軽く見えて意外に堅い。
それで失望してあっさり去る男もいれば、かえって燃える男もいる。
先月から店のバイトに入った学生くんは、見た目も言動も典型的な今どき男子で、微妙にダサめなのが安心感につながって、大学も中堅どころ、なんというか私の男版だった。
だからか、私から誘ってしまった。彼が誘ってこないことで、私はなんだか焦ってしまったのだった。思えば、それも彼の策略だったのかもしれない。

ちよっと高めの居酒屋デートは私が決めたけど、その後は彼の部屋に連れこまれた。学生くんのその行為は、これもごく普通だった。
アレはサイズは普通だけど、立ち上がると大きめの亀頭が露出して、全体が刀みたいに反り返った。色白なので、妙にそこだけ赤く見えた。
それをむさぼるようにしゃぶり、私達は何度もまじわった。
さすがに疲れて、いったん寝入ってしまった。目が覚めたのは、薄明りの中の妙なものによってだ。

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亀頭の大きな、濃いピンクの反り返った棒状の物。寝ぼけていた私は、本当に彼のアレが外れてシーツに落ちていると錯覚して起き上がった。
全裸のままベッドに座る彼は、店内にいるときと同じさわやかな何食わぬ表情で、それを取り上げてスイッチを入れた。
振動するそれを、いきなり私のむき出しのあそこに当ててきた。すっかり乾いていたのに、あっという間にぬるっと先端が入ってきた。
こんなものいつも持ち歩いてるの、という問いも飲みこんで、壁に背をつけて逃げ場のない私は、後から名前を知った「Swan Mini Wand」よりも全身を震わせた。
大人の玩具は初めてじゃなかったけど、この小型の電マにはやられた、という感じだった。学生くんにもだ。
手頃、手軽に見えてすごい性能、可愛いふりしてスゴい。
あなたみたいねといったら、椎奈さんみたいでもあるよと小さく笑われた。

岩井志麻子
岩井志麻子

1964年、岡山県生まれ。『ぼっけえ、きょうてえ』(角川書店刊)で第6回 日本ホラー小説大賞、2000年には同作品で第13回 山本周五郎賞。2002年、『岡山女』で第124回直木賞候補となる。同年には、『trái cây〔チャイ・コイ〕』で第2回婦人公論文芸賞、同作品は2013年に映画化。
また、近年は東京MXテレビ『5時に夢中! 』木曜レギュラーコメンテーターほか、日本テレビ『有吉反省会』への出演など、強烈なキャラクターを活かした映像出演など幅広いジャンルで活動中。