繊細さと大胆さが同居する女性社長の構想と戦略、秋葉原ラブメルシー 高橋さなえ社長

倒産を経て起業へ 波乱万丈な過去の経歴

高橋社長がアダルトグッズ業界に参入したのは今から16、7年前。それ以前は玩具メーカーを起業していたという。

高橋さなえ社長(以下、高橋):玩具メーカーは労働集約型の傾向が顕著で、当時は国内向上から海外工場への移管が盛んに行われていました。その影響で仕事が激減してしまい、借金を背負うことに。そこで新たな道を模索するなか、アダルトグッズ業界に興味を感じたことが参入のきっかけです。

まずは玩具作りのノウハウが活かせるという点からグッズの製造を行う会社を起業。そこから6~7年後には秋葉原にビルを借りてショップへと手を広げた。

高橋:子どもの玩具を作っているころから、エンドユーザーの声が遠いという思いをずっと持っていました。当時のアダルトグッズ業界はとくにその傾向が顕著で、お店は繁華街の裏道にあるアンダーグラウンドなイメージ。リサーチするにも女性ひとりでは入りにくかったんです。それなら小売もやってしまえと一念発起して秋葉原のビルを借りることにしました。それが今の「ラブメルシー」のビルというわけですが、まだアダルトグッズ市場が世間に開かれる前ということもあり、いろいろな意味で大冒険でしたね。ただ、製造、卸し、小売までの一連の流れを行うことで、お客様の望むグッズを作り、それに対する生の声を聞いて次の開発に活かすという循環が生み出せる。そういったことに挑戦することは意味のあることだという確信みたいなものはありました。

繊細さと大胆さが同居する女性社長の構想と戦略、秋葉原ラブメルシー 高橋さなえ社長クリスタルボーイ パール入り

たくましいイボイボが気持ちよさそうな「クリスタルボーイ パール入り」は人間工学に基づいた形状。

繊細さと大胆さが同居する女性社長の構想と戦略、秋葉原ラブメルシー 高橋さなえ社長フェアリーシリーズ

好みの振動が選べる電マのフェアリーシリーズはいろいろな大きさのバリエーションが揃う。使いやすいサイズで、アタッチメントが豊富な「フェアリーミニ」が特に人気。

そして、そのユーザーとの距離感を大切にする姿勢は、今も続くメルシーという会社の方向性を決定する大きな指針となっている。

繊細さと大胆さが同居する女性社長の構想と戦略、秋葉原ラブメルシー 高橋さなえ社長オルガスター

200万個というメガヒットを記録したオルガスター。女性の快楽にこだわり抜いた逸品だ。

ユーザー希望を逃さず200万個の大ヒット

ユーザーの声を大切に考えるという高橋社長の信念は、同社の製品開発にもよく表れている。

高橋:まず、開発した製品はさまざまな人たちにモニタリングを行い、最低でも7割以上から支持されないと商品化は行いません。人間の感覚は本当に十人十色であり、その人間の体に使うアダルトグッズにモニタリングは必須。のづくりの基本は自分が楽しみながらも納得できる商品を作ることだと思っていて、それはお客様が本当に必要とするモノ、喜ばれるモノを提供することから実現されるんです。

そのためにプライベートでもさまざまなリサーチを行っているとか。

高橋:好きだからということもありますが、飲み会や合コンのような集まりにも積極的に顔を出しています。そこで「アダルトグッズを作っているんだけどね」と話を振ると、そこに参加した男性や女性たちはかなり食いついてくる。最終的にいろいろな相談をされるお母さんみたいな感じになるんですが、そういったエロトークから新たな発想は現行商品の問題点なんかに気付かされることが多いんです。なので、どんなときでも「何か良いネタないかな~」と自然に考えてしまうし、今もインタビューを受けながら何かなかな、と(笑)。

実際、同社の商品はターゲットのツボを抑えた発想がよく見られる。

高橋:オルガスターは多くの女性にバイブの不満や要求するポイントのリサーチを重ね、違和感を覚えることなく挿入できて女性器にジャストフィットする形状に苦心しました。そして、快感のポイントを外さない動きや振動も熟考。また、近年徐々に注目されている膣圧の向上にも繋がるというメリットもあり、200万個を超えるヒットを記録しました。

このように従来のグッズにある先入観を打破してヒットを飛ばす時、ユーザーの声は本当に貴重だという。

高橋:アダルトグッズは玉石混淆だった昔に比べると昨日やデザインのクオリティがはるかに高くなり、ユーザーも長く大切に使ってくれる人が増えました。だからこそ、ユーザーが本当に望むものを探しだすための努力は怠ることができないんです。


218激感シリーズ

セクシーなコスチュームの「激感シリーズ」はSMチックなエロスがムンムンと香ってくる。

中年層の性を解放する壮大な啓蒙活動を企図

昔に比べてアダルトグッズが社会に浸透しているのは確かだが、路面店の厳しさは富に感じていると高橋社長は語る。

高橋:今のショップは大手と零細の二極化が激しく、ネットも加わった価格競争や後継者不足で潰れてしまう。しかし、ユーザーと店員の距離が近いなど、路面店の持つ異議というのは大きく、メーカーにとっても商品の反応を聞ける貴重な存在。それだけに小さな店が消えないようなシステム、小売の連合を作るなどの動きが出てくればいいな、と思っています。ただ、こればかりは一メーカーやショップが動いてもどうにもならないので、業界全体で考えていく必要がありますね。

そんな高橋社長は将来的に着手したい壮大な構想を秘めているという。

高橋:昨今は「性」がオープンに語れるようになり、若い世代が気軽にアダルトグッズを購入できるようになりました。それで次は、と考えた時に年配層だな、と。この世代は「性」について閉鎖的な時代を生きていたこともあり、気になっていても気軽に語れる相手や場がない。そこで誰でも気軽にエロトークができるサロンのようなものを開催できないかと思っています。それは女医さんが主催する堅いものではなく、あくまで楽しい猥談というライトなテイスト。ご近所さんや同僚にはなかなかこぼせない「性」の愚痴を言い合い、他のご家庭のことを知って意識が変わる。そのことで途絶えていた夫婦の営みが復活したり、お互いを下の名前で呼び合うようになるような。その活動で年配層の「性」がオープンになり、アダルトグッズを使ってみようと思ってくれるWin-Winの関係を築けたらステキだなと思います。
ただ、これは私個人ではどうにかなる問題でもないので、今はメディアや女医さんなどのいろいろな関係者に相談しているところなんですが。モノを作って売るだけではない、エロというものを追求していくことは続けていきたいですね。

楽しそうに夢を語ってくれた高橋社長だが、その瞳には実現を見据えた強い意志の光が灯っていた。

繊細さと大胆さが同居する女性社長の構想と戦略、秋葉原ラブメルシー 高橋さなえ社長

男性専用フロアもアリ
女性も楽しめるが、まだまだメインユーザーは男性。そのため、ゆっくりと納得がいくまで商品選びができるようにDVDやオナホールなどの男性向け商品フロアは、スタッフも含めた女性の立ち入りをできるだけ制限している。導入当初はかなりの冒険だったが、現在まで苦情も出ずに好評だとか。

繊細さと大胆さが同居する女性社長の構想と戦略、秋葉原ラブメルシー 高橋さなえ社長

女性も入りやすい店頭
女性が入りやすいように1階のフロアはコスプレ衣装などエロ度が低いグッズを陳列するように心掛けている。さまざまなメディアで「ラブメルシー」を知り、まずは見学してみたいというライトユーザーも気軽に訪れることが可能。実際、取材時には道行く女性たちが店頭のコスプレを楽しそうに物色していた。

ラブメルシー 高橋さなえ社長

OLを経て玩具製造の会社を起業。その後、アダルトグッズ業界に参入して、現在は製造、卸業、小売を行う「ラブメルシー」の代表取締役社長を務める。ユーザーの声を重要視した商品開発を心掛け、「オルガスター」や「フェアリーシリーズ」など多数の人気アダルトグッズを開発。メディア活動も精力的にこなす。