一つの玩具から紡ぎだされる、女性たちの物語。新しい欲望。
多方面で活躍する作家・岩井志麻子先生による読み切り小説。

岩井志麻子の千夜玩具物語

こんな顔も体も焼いてて黒くて、髪もまつ毛もエクステしまくりのギャル、しかも企画単体では人気のAV女優が「男は嫌い」なんていうと、いわゆる普通の仕事をしてる人達は「えっ嘘でしょ」って顔をするのは決まってる。あと、これもつけ加えてくる。「男を引っかけたくてそんな格好して、男が好きだからAVやってんだろう」って。
同じギャル仲間や風俗、AVには、あ~わかるアタシも、ってうなずいてくれる子が多い。だいたい私達は心底からギャルなオシャレが好きなだけで、自分のために装ってる。
本当に多くの男を引っかけたいなら、黒髪でユルフワな恰好するから。あと、セックスが好きなのと男が好きなのは別物。本当の男好きは、男からのチヤホヤと男とのイチャイチャが好きなわけ。
少なくとも私は、男の「肉体的快感」だけを求めてる。

体の快感を求めるのは、処女の頃からだった。お年玉で電マ買ったくらいだから。店員にも親にもいいわけが聞くように、勉強で肩凝ったから欲しかったって。
初体験して男とのセックスの良さを知ってもまだ、電マは毎晩のように愛用し続けていた。
男嫌いになったのは、母が父に殴られっぱなしで私も殴られてて、でも母だって私は放ったらかして兄ばかり可愛がったこともある。兄は父そっくりになっていった。
高校でギャルに目覚め、セックスは気持ちいいけど男はウザいとわかった。卒業後すぐ家出して、やりまくり人生まっしぐらになった。愛用の電マはさすがに置いてきたけど。

ちなみに私の名前は絵智で、こんなのH、エッチなんてあだ名がつくのは親はわからなかったんだろうか。生きていくためにしたバイトは、名前の通りほぼエッチ系だった。
けど、私はいつだってちゃんと店で働いて報酬をもらった。男に媚びてタカッたり、何もしないで小遣いもらうのは嫌だった。やっぱり、男が嫌いってのが根底にあった。
AV女優にもよくスカウトされてたけど、今の事務所が気に入ったのは無理やりな黒髪ロリ路線を押しつけてこないことと、スタッフに元ギャルが多くて気も話も合うこと。
レズもやったけど、これは快感はイマイチ。やっぱりセックスは男とやるのが気持ちいい。楽しく遊んだり飲んだり、でもときどき真面目な話をするのはギャル仲間がいい。

そんな私が今ハマッてるのは、電マの「Milky」。前に持ってたやつの半分くらいのサイズだけど、威力はまったく同じ。最強にすると一瞬でイッちゃうから自分で自分をじらして、弱、中、強、とレベルあげていく。すべては、自分の気持ちよさの追求。
あそこに当てがう部分も前に持ってたやつに比べれば小さいけど、本物の亀頭よりずっと大きい。パステルカラーの紫にピンクに水色、三本そろえてしまっただけじゃなく、髪まで同じ三色に染めてしまった。なんかこれ、存在そのものがギャルっぽいから。

岩井志麻子
岩井志麻子

1964年、岡山県生まれ。『ぼっけえ、きょうてえ』(角川書店刊)で第6回 日本ホラー小説大賞、2000年には同作品で第13回 山本周五郎賞。2002年、『岡山女』で第124回直木賞候補となる。同年には、『trái cây〔チャイ・コイ〕』で第2回婦人公論文芸賞、同作品は2013年に映画化。
また、近年は東京MXテレビ『5時に夢中! 』木曜レギュラーコメンテーターほか、日本テレビ『有吉反省会』への出演など、強烈なキャラクターを活かした映像出演など幅広いジャンルで活動中。