1月9日、月島のブロードメディアスタジオ試写室にて「iroha夜の女学院<出張編>」が開催されました。今回は、日活ロマンポルノリブートプロジェクトで撮影された『牝猫たち』がプレミア上映。あの『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』の白石和彌監督による日活ロマンポルノ新作となります。

主人公はデリヘル嬢。元OLで借金を抱えてネット難民となった雅子を主軸に、結婚している人妻ながら夫の浮気がきっかけで風俗に入った里枝、シングルマザーの結依の日常が切り取られていました。

とにかく「今」の社会問題がとことん詰め込まれた作品でした。引きこもり、ネット炎上、不倫、育児放棄、老人の孤独死、ストーカーなどなど……。ここで描かれていた性は、私が描いていたロマンポルノの世界とはうって変わった、乾いたセックスでした。でもきっと、これが現実。現代人のセックスを描こうとしたら、リアルを突き詰めればきっとこう。ポルノを見たというよりも、ドキュメンタリー映画を見たかのような気分に襲われました。

それと同時に、私の2年前までの職業であった「風俗サイト編集」時代の感覚を思い出しました。主人公たちが働いていたのは、池袋の人妻店でした。まさに私は、2年前まであの店の待機所のような場所で、彼女たちのようなデリヘル嬢をを取材していました。「性感帯は?」「好きなプレイは?」「得意なサービスは?」なんて、簡単なインタビューをして。巧妙に体型をカバーした、顔出ししない写真を撮って。毎日が、『牝猫たち』との出会いの連続でした。

色んな店を辞めて入ってを繰り返して、毎回「はじめましてー」と新人取材に挑んでくるあの娘。ヌードグラビアの撮影に、2人の乳児連れてきちゃったあの娘。霊感あるから数珠作ってあげる! と嬉々として言ってくれたあの娘。気に入られてレズプレイを申し込まれたこともあったし、取材中に泣かれて抱きしめ続けたこともあったし、同行したライターを鞭で打て! と女王様に命令されたこととか、マ●コがイソギンチャクみたいに動くからって無理やり見せつけられたこととか。ああ、色んな風俗嬢たちとの思い出が、今でも幾らでも記憶から湧き出てきます。

もし私が、依頼を受けて彼女たちを取材したら、どんな感じだったかな、とも考えましたね。もちろん、今もライターとして風俗嬢の取材は続けているのですが、さすがに毎日ではないですからね。1年365日、数多の風俗嬢と接していたあの頃の私だったら、どう捉えたかな、と考えたのです。

一番ラクに取材できそうなのは、ダントツで里枝。承認欲求でデリヘル嬢をしてる設定だから。そういう「女として認められたい」って女性は簡単なインタビューはもちろん、体験取材もグラビアも全力で取り組んでくれるはず。なんか撮る側が嬉しくなっちゃって、思ってた以上のもの引き出せて、掲載した途端に爆発的に鳴る(繁盛する)タイプ。

結依は、取材しに来たのが女だと妙な対抗心を燃やしてきそう。興味本位で話を聞いたら、「バカにしてんの!?」とか言ってキレてきそう。ただ、自分よりブスだと自尊心のバランスがとれるので、私は問題ないだろう(それもどうなんだ)。グラビアは、自分カワイイ意識あるから全然イケる。体験取材だけは厳しいかな。相手がブサイクでモテなそうな男だと、とんでもなく暴れそうだ。「なんで金も貰わずにプレイしなきゃなんないのよ!」って絶対言う。終わった後、絶対疲れるだろうなぁ……。

雅子は、ある意味では一番厄介。たぶん割り切ってなんでも応えてくれるだろうけど、それ以上もそれ以下もなくて。ポテンシャル以上のものは引き出せないだろうな。撮り終わった後、達成感ないだろうな。単純に、ルックスがとてもいいので、そこさえアピールできればお客さんはついてくるだろうし。鳴らしてあげたい! って気持ちが起きないので、取材では出会いたくない気がします。

そんなことを考えつつ。『牝猫たち』の上映が終わり、映画の余韻と妙なノスタルジックに包まれながら試写室を後にしました。来週あたり、また風俗店に取材伺うのですが、この映画のこと思い出して、ちょっと吹き出しちゃうかもしれません。

最後に余談。デリヘル店の店長が「秘蔵のとびっこ」を物凄く大事にしているというシーンがあったのですが。客も嬢もシラけてるのに、店長だけは絶対の自信で「これは興奮する!」と大喜びっていう、あの感じ。なんか、男性店長が一人でやってる店にありがちの雰囲気で「あるある」でした。あそこ、何だかリアルでしたね。

もちづき千代子
もちづき千代子
Twitter:@kyan__tama

AVメーカー広報、風俗情報サイト編集、アダルトグッズメーカー社員を経てフリーに転身。
性産業への己の愛を凝縮した卑猥なテキストを綴り続ける、哀愁の豊満熟女ライターである。