【アダルトグッズヒストリー】性の爛熟を支えた、江戸の『四ッ目屋』

四ッ目を合せ 死にますのいきますの

アダルトショップの元祖とされる四ッ目屋。両国薬研堀(現在の中央区東日本橋)に店舗を構えて大いに繁盛したが、いま薬研堀にその痕跡はチリほどにもない。
それにしても四ッ目屋とは、へんな屋号だよね。実はこれって家紋の「四ツ目結い」に由来する。
だもんで、「四ツ目結い」を染めぬいた暖簾とか「四ツ目結い」をあしらった行燈で、ハデハデのPRにコレつとめた。その一方で、客は人目を避けたいという購買心理にも応え、店内の照明は行燈の明かりだけ。売り手の顔もおぼろげなぐらいに薄暗かった。そのなかでヒソヒソと取引が……。

四ツ目屋は得意の顔は知らぬ也

あまりアテにならないが、開業は寛永3(1626)年とされている。ご先祖さまについても鎌倉幕府の御家人・佐々木信綱としているが、こちらもおそらくマユツバだろう。
それはともかく四ッ目屋は、数々の性具・性薬を扱っている。四ッ目屋の広告引札(リーフレット)から拾い出して、それを羅列してみると。
性具なら吾妻形(男性用オナグッズ)・兜形( 男性用避妊具)・互形( レズ用オナグッズ)・茶筌(男性用オナグッズ)、張形(女性用オナグッズ)・鎧形(ED補助具)。性薬なら長命丸(強精剤)・朔日丸(ピル)・女悦丸(女性を喜悦させる塗り薬)。水牛の角や鼈甲などを素材にした鎧形と兜形についてはもうちょいと説明をくわえておこう。

鎧形はペニスの胴体部に装着する。で、鎧をつけたような格好になるから鎧形ってわけ。中折れがひどい横丁のご隠居さんらが使用したにちがいない。
亀頭にかぶせる兜形ってのは、四ツ目屋のキャッチコピーによると「懐妊せぬ道具」となっている。つまりコンドームだわな。英国でコンドームが発明される、ずっと以前から世に出回っていたんだぜ(フランスという説もある)。この鎧形と兜形で完全武装すれば、小兵もヘンシンして、「やあやあ、遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見そうらえ!」ってか。夜いくさに小兵は鎧兜なりそうそう、互形についても触れておかないと。
なんたって、世の中にレズビアンが存在することを見越して、互形は開発されたんだんね。日本の性文化って、凄いのひとこと。とくに需要が多かったのは、女性ばかり3000人といわれた江戸城大奥だったようだ。
いったい互形は何本ぐらいが生産されたのだろう。ところがこの互形などの張形類は、ほとんどいまの世に残されていない。
かねがね拝見したいものだとあちこち探し回った。こうしてやっと宇都宮市内の『性神の館』にたどりついた。さっそくに訪問して性具とご対面できた。ちょっとした感動ものだったな。思わずニオイを嗅いかいじゃったりして。