「国民総セックスレス」時代が到来した現代の日本。本当にこのままでいいのか……疑問を抱いたトイズマガジン編集部は、「性欲アップ講座」を開設いたしました。毎回、性に関するプロフェッショナルである講師をお迎えし、さまざまな性の悩みの解決の糸口を語っていただいております。

今回ご教授いただくのは、エロスの総合デパート・芳賀書店の専務であり、セックスアドバイザー&セラピスト&コンシェルジュとしても活動している芳賀英紀さん。性にまつわる商品を売る立場から、現代のアダルト事情について語っていただきました!

――芳賀英紀さんは、神田神保町で80年の歴史を誇る老舗書店・芳賀書店の三代目なんですよね?

芳賀英紀(以下、芳賀):はい。継いだのは今から15年前……21歳の時でした。

――その時代から考えると日本のアダルト事情はかなり大きく変わったと思うのですが、芳賀書店の専務である芳賀さんから見て肌で感じている変化というのはありますか?

芳賀:お客様が商品を手にとって戻す確率が上がりましたね。お客様はいわば、宝探しをしてるわけですけど、その当たりへの信用度がかなり下がっているんですよ。昔なら5本に1本は自分に刺さるものがあったのが、タイトル自体がアソート化しちゃってますからね。本当に当たりはずれが運になっちゃってるというか、目利きの域を超えちゃってるというか。

――つまり、昔ならイチかバチかで買ってた人も、そういう賭けに出なくなった?

芳賀:まさにその通りです。レジに20本持ってきたお客様も、そこで「半分にして」って言ってくるくらいシビアです。それだけ、商品一つ一つへの商品力が落ちてると解釈しています。

――男性の性欲を掻き立てるための商品のクオリティが下がっているとも言えますよね。

芳賀:個人的に思っているのが、最近のAV冒頭に必ず出てくる「海賊版禁止」の画面。あれ、すごい怖い音楽と共に出てきますよね。あれは止めた方がいい。僕らは慣れ切っているけど多くのお客様はどこか罪悪感や、後ろめたさを抱きながら家で見てるわけじゃないですか。あの音楽をポップなものに変えるだけでも売り上げが上がると思うんですよね。

――なるほど~。これは斬新な発想ですね。でも、ちょっとわかるような気がします。昂ってた気持ちも下半身も盛り下がるというか。

芳賀:見始めてすぐに「海賊版は犯罪です! ティロリロリロ~どーん♪」みたいな画面だと、萎えるじゃないですか。お客様が一人で何本も見る中で、スタートするたびに絶対あの画面が出るとテンション落ちますよね。せっかく、お客様は勇気をもって買ってくれたのに。

――お客様でも製作側でもない、書店ならではの目のつけどころですね。

芳賀:僕はモザイクが濃くなった、という話なんかはあまり気にしてないんです。3ヶ月くらいで慣れるもんだと思うんですけど、どちらかというとそういう作品作りの細やかな配慮が足りない気がするんですよ。ユーザーに対するホスピタリティが。「ユーザー至上主義」と言いながら怠けてるんじゃないかと。

――厳しい、しかし率直な意見です。確かに男性の性欲のお手伝いをするためのAVが、萎えさせる一因を作ってしまっては本末転倒ですよ。

芳賀:AVは、トップアップ よりボトムアップの時代だと思うんですよ。細かくお客様や演者さんのストレスが潰せていければいいんじゃないかな、と。

――そういった状況の中、芳賀さんが書店の人間として取り組んでいきたいことや対策などはありますか?

芳賀:うちは古物商の資格を持っているので、「古書センター Part.2」というすごく狭い店を少し改装して、ビニ本を置いたり昔の芳賀書店のようなところの再現と考えています。

――謂わば、昔のエロの復興ですね。実用としてはもちろんですが、資料としての価値も高そう。

芳賀:あとは、ちょっとずつメーカーを回るようにしてますね。これは芳賀書店、もしくはうちが協賛する会社でAVを作ることが目的です。さまざまな問題が起こっている中で、作り手でないとどうしても発言ができない。今の流れには間に合わないかもしれませんが、また10年後くらいにもう一度そういう波が来ると思います。その時に、芳賀英紀として発言権のある立場にいられればと。

――芳賀書店が、作り手としても活動を始めるということですか!? これは大ニュースです。

芳賀:あと、製作側の事情を知らないので、ショップとして文句を言うことはできるんですが具体的な文句になりづらくて……。そういうことがないためにも現場を学びたいという気持ちがあります。

――つまり、芳賀さんは業界を背負って立つ覚悟があるということですね。これはもう少し、その辺の深いところを聞かせていただきたいと思います。

次回、芳賀英紀がアダルトVR問題を語る!?
(取材・文・写真=もちづき千代子)

芳賀英紀
Twitter:@hagashoten

神田神保町にある老舗書店・芳賀書店の専務。セックスアドバイザーやコンシェルジュとしてユーザーからの悩み相談を受け付けているほか、講演会やイベント企画など、幅広い活動を行っている。