現代日本には「国民総セックスレス」時代が到来。こんな時代だからこそ、トイズマガジン編集部は「性欲アップ講座」を開設しました。毎回、性に関するプロフェッショナルである講師をお迎えし、男女の性の悩み解決の糸口を探っています。

ご教授いただくのは、エロスの総合デパート・芳賀書店の専務であり、セックスアドバイザー&セラピスト&コンシェルジュとしても活動している芳賀英紀さん。前回は、芳賀書店の専務の立場から、男たちを萎えさせてしまっている現代のアダルト業界への警鐘を鳴らしていただきました。今回は、アダルトVRを”オカズ”の視点から語ってもらいます!

――そういえば、芳賀書店では去年かなり早い段階でアダルトVRイベントを開催されてましたよね。

芳賀英紀(以下、芳賀):そうですね。すでにその時点でもいくつかのメーカーが開催してましたけど、おそらくショップ主体でという意味ではうちが最初だったと思います。

――AV女優さんも来ていて、かなり盛り上がっていたと聞きます。あれこそ、アダルトVRの普及という意味では正しい方法だったような気がしますが。

芳賀:あとはオペレーションですよね。機材の問題もあるし、なかなか難しいところではありましたが……。今後もしまた開催するのであれば、イベントスペースにもWi-Fiを飛ばすなり、現場をもっと固めていきたいところですね。

――アダルトVR、どうですか? 男性の性欲を満たすための新しい”オカズ”が誕生したとも言えると思うのですが、芳賀書店から見るとその期待値については……。

芳賀:去年一年間かなり集中的に頑張ってみたんですが、ソフトという意味では今年はもう芳賀書店では扱わないかもしれません。イベントとしてはやるかもしれませんけどね。

――それって、ぶっちゃけ売れなかったということですよね?

芳賀:というよりは……。今って、まだ技術者や作り手のマスターベーションだなぁって思うんですよ。今まで2Dで表現してきたものを、VRに対応する形で作っているだけというか。あれがきちんと”オカズ”として売れるためには、もう少しVR専用監督とか、まったく新しい視点が必要ですよね。

――あくまで作り手の自己満足の段階に過ぎない、と?

芳賀:今はもう主観ばっかりですからね。編集も女の子をキレイにすりゃいいんだ、みたいな。じゃあ背景の明るさは? とか細かいところにまで目がいってない。デジタルって新しい技術になると、アダルトで普及するって都市伝説がありますけど、今回が一番「ほら、普及しないじゃん」って言えちゃうかなって。まあ、突き詰めていけば凄くいいコンテンツなんですけど。僕はVRはもっと教育に使うコンテンツの方が向いてると思ってますから。

――アダルトVRはまだ”オカズ”になり得ない、と。

芳賀:問題点として、定点でしか撮れないっていうところがね。これが動くようになってようやくスタートできるんじゃないかと。そしてさらに言えば、VRだけでなく普通の映像の方でも、4Kが台頭し始めてますけど、4Kの画質のまま出しても、結局は売れないような気がします。

――考えてみれば、AVではBlu-rayも普及せず、未だに普通のDVDの方が売れているのが現状ですからね。

芳賀:ただ、4Kの武器としては明るさが調整できるので照明がいらないってところなんですよ。わざと画質を落として見やすい状態にしながら、どういう雰囲気を作るかはやりやすくなるので。そこはショップとして要注目だと思ってます。

――そう考えると、男性の性欲って非常にデリケートですよね。視覚的に美しかったり迫力があったりすればいいってもんじゃない。

芳賀:そういった中で触覚の追加として、AVとアダルトグッズの連動というのは興味深いところですね。逆にそういうことをやっていかないと、みんなTENGAじゃないですか。「打倒、TENGA!」という声はよく耳にしますけど、じゃあどうやって打ち負かすのかっていうと策が何もない。もっと違う方向から、連動の企画を立ち上げるなり、広げていかないと……。

――連動は実情として、あるにはあるけど上手くはいってませんよね。先日、VR風俗の方とお話させていただきましたが、VR風俗っていうのはVR映像と人間そのものの連動なんですよね。これについてはどう思われますか?

芳賀:VR風俗によって救われる層っていうのが一定数いると思うんですよね。対人恐怖症だったり、二次元しか愛せなかったり。LGBTだけでなく、そういったセクシャルマイノリティも存在しているのは確かですから。VR風俗もVRではありますが、女性の温もりは感じられますから。2D+温度にハマるか、もっと外に目を向けるかはその人次第ですが。

――性の新しい扉を開く、ひとつのきっかけにはなる可能性はありますね。

芳賀:何よりアダルトVRというものに興味を抱くきっかけにはなると思うんですよ。だからこそ、初体験って大事なんです。そこでクオリティの高いものを見せていかないとすぐにそっぽ向かれてしまう技術でもあるので。簡単に「面白い」ってことだけで扱って欲しくないジャンルとも言えますね。さらに言えば、働く側としても本来は働けなかった人達の受け皿にもなると思います。VR風俗は、男女ともに救いの場となる可能性を秘めているのです。

次回は、芳賀英紀さんのセックスアドバイザーとしての観点から近年の性事情を語ってもらいます!
(取材・文・写真=もちづき千代子)

芳賀英紀
Twitter:@hagashoten

神田神保町にある老舗書店・芳賀書店の専務。セックスアドバイザーやコンシェルジュとしてユーザーからの悩み相談を受け付けているほか、講演会やイベント企画など、幅広い活動を行っている。