「国民総セックスレス」が叫ばれる現代の日本。男は性への興味を失い、女は潤いを失っていく……これでいいのか日本のエロス!? そこでトイズマガジン編集部は「性欲アップ講座」を開設。毎回、性に関するプロフェッショナルである講師をお迎えし、この時代の風潮に風穴を開けていきます!

ご教授いただくのは、エロスの総合デパート・芳賀書店の専務であり、セックスアドバイザー&セラピスト&コンシェルジュとしても活動している芳賀英紀さん。第1回第2回は、芳賀書店の専務の立場から、アダルト業界の抱える問題をテーマとしていましたが、今回からはセックスアドバイザーの観点から現代人の性事情について語っていただきます。

――芳賀さんは、セックスアドバイザーとしても活動されているそうですが、具体的にはどのような流れで相談を受けるのですか?

芳賀英紀(以下、芳賀):主にツイッターや会社の問い合わせメールからですね。その時点で具体的な悩み相談が来ることもありますが、「お時間いただけますか?」くらいで連絡先が書いてあって電話で詳しい話を聞く、みたいなパターンもありますよ。

――それって、連絡くれた人全員に対して対応するんですか!?

芳賀:条件が一つだけあるんです。それは、僕に会いに来てくれること。メールや電話で、それを解決することは初回では絶対にしません。

――直接、顔を見て話せることが条件なわけですね。

芳賀:僕は顔を合わせるってことをすごく大事にしてるので、それを必ずしてもらいたいんです。それと、「変わりたい」って意識のある人は遠くても必ず来ます。ただ聞いて欲しいだけなら電話で済んじゃうんですよ。特に女性からのアナウンスは、違う狙いの人もいるので……。

――違う狙い?

芳賀:悩んでる人って、それを承認してもらいたいって気持ちがありますからね。カウンセリングをして、そのまま僕に依存されるんじゃ意味がないんですよ。

――ああ、なるほど。悩み解決が目的でなく、依存先を探してるっていう。

芳賀:そうではなくて、独り立ちがちゃんとできるような状態にしなくてはならないわけで。そこはすごく強く意識してますね。

――男女の比率としてはどのような感じですか?

芳賀:男性のみが4割、女性のみが3割、ご夫婦・カップルが3割といったところです。男性のみの場合は、プライベートの会合で出会った方が改めて相談に乗って欲しいと持ちかけてくるパターンが多いです。カップルは口コミで全部繋がってますね。「解決してくれた」と同じような悩みを抱えたカップルに宣伝してくれて、「じゃあ次はうち」みたいな。

――男性からの悩みで一番多いのは?

芳賀:ずばり「嫁に欲情しない」ってことですね。薬を試してみてダメで、もう次どうしたらいいのか? という。もはや性欲というものが何なのか、それが分からなくなっている人が多いです。中折れしちゃうとか、どんなに頑張っていても喜んでもらえないとか。

――女性の方は?

芳賀:7割以上がセックスレス問題ですね。彼氏、旦那に対してのセックスレス。聞いてると、本当に細かい日常のスキンシップが足りてないんですよ。そこが変わるだけでぜんぜん違う。敢えて不倫を勧めることもありますよ(笑)。

――不倫! この不倫バッシングの時代に敢えて、そこを勧める!?

芳賀:旦那さんとそういう関係を結ぶことに嫌悪感を持っちゃってる女性って多いんです。僕も実際、一度離婚を経験してるのでその気持ちは分かるんですよ。パートナーを触るのがイヤっていう。こういう時って、相手の短所しか見えてない状況なんですよね。だからこそ、別の人を触ってみて気持ちを切り替える。本来のパートナーを客観的に見えたり、非日常になったりして解決に向かうことがあるんです。

――でも、それで余計にパートナーを嫌になっちゃったりすることもあるんじゃ……。

芳賀:それは単に、最終的にダメになることが早まっただけですよ。女性によく言うのが「愛情は大事にしないといけないけど、情はあんまり大事にしちゃダメだよ」ってこと。男性は情でも一緒に居れるんですけど、女性は情では無理なんです。どんどん病んでいっちゃう。

――ああ……それは、なんとなくわかります。

芳賀:アグレッシブな方ならいいんですけど、積極的じゃない方っていうのは特に内に篭ってしまいますからね。外に出るチャンスを作るというのが大事ですね。美術や芸術に触れたり自身を高めた結果、寄って来る男が変わったって話も聞きますよ。

――性の悩みの根本は、結局のところ自分にあるんですね。

芳賀:そう。DV男ばかり寄ってくるなんてまさにそれですよね。自分を鏡として、自分がどう変わっていくか。同じような男ばかり寄ってくるのは、 、自分の責任ですからね。実は、その人の人となりについても踏み込んだ、わりと厳しめなアドバイスをすることが多いです。

カップルでの悩み相談はまた違ったものなのでしょうか?

芳賀:カップルでの相談の時は、僕を含めた三者会談のような形になります。普段のカップルの会話の中に僕が入っていくような感じで。そうすると、日常の会話が聞こえるので具体的に訂正ができるんですよ。「その言葉よくないね」とか、「今の言葉ってこういうことですよね? でも奥さんはどう捉えました?」とか。要は日常のセックス環境を変えるようなイメージなんです。

――セックスアドバイザーというよりは、人生相談に近いような?

芳賀:そうですね。セックスにすごくフォーカスが当たってるといるかというと、そうでもないんです。

――根本的な問題を解決させていくって感じですよね。

芳賀:僕の中では、”性”というものの下に三大欲求(衣、食、住)があるって図式があるんですが、人間って余裕がなくなるとこれが逆ピラミッドになっているんですよ。バランスが悪くなって、何していいかがわからなくなっている。その理由としては、お金がなかったり忙しかったりがあるんでしょうが……。そうなると「オナニーしてる場合じゃないぞ」「セックスしてる場合じゃないぞ」という流れでセックスレスなり性欲低下なりに繋がる。でも、これだとどんどん仕事のクオリティも下がりますね。

――負のスパイラルですね。性欲には「余裕」も必要ということでしょうか。

芳賀:そうですね。特に男性って基本的にズボラじゃないですか。そこに何とかキメ細やかさを仕事に入れるられるのって、結局モテたいからなんですよ。プライベートでマメになると仕事にマメにもなっていくんですよ。だから相談の時にも「あなたは何のために働いてるんですか?」ともよく聞きますね。「プライベートを充実させるため」って答えが返ってきたら「じゃあ、そのためにはどんな風に働けばいいのか」を考えてもらうんです。そこからセックスに関しても改善していくというパターンは多いです。

最終回は、芳賀英紀さんからさらに深いセックスに関する悩み解決の極意をご教授いただきます!
(取材・文・写真=もちづき千代子)

芳賀英紀
Twitter:@hagashoten

神田神保町にある老舗書店・芳賀書店の専務。セックスアドバイザーやコンシェルジュとしてユーザーからの悩み相談を受け付けているほか、講演会やイベント企画など、幅広い活動を行っている。