「国民総セックスレス」の時代となって久しい我が国・日本。これからの未来を担う若者たちばかりか、大人たちも性に無関心になっている……!? これはいけない! ということで、トイズマガジン編集部は「性欲アップ講座」を開設!毎回、性に関するプロフェッショナルである講師をお迎えしてお話を伺っています。

ご教授いただくのは、エロスの総合デパート・芳賀書店の専務であり、セックスアドバイザー&セラピスト&コンシェルジュとしても活動している芳賀英紀さん。最終回は、セックスアドバイザーとしての芳賀英紀の考えをさらに深いところまで探っていきますよ!

――そういえば相談の中にはセックスレスに関してだけでなく「もっとハイレベルなセックスがしたい」っていう要望もあったりしないんですか?

芳賀英紀(以下、芳賀):ハイレベル(笑)。まあ、やることはやり尽くしたけど「もっとしたい」っていうカップルはけっこう多いですね。自分たちの理想を100として、そこに近づきたいとか。そのためによりハードなことを……って、SMとか縛りとかに行き着いてしまうわけです。でもそこまではしたくない。どうしたらいいですか? って。

――それは……具体的に、どんな風に答えてあげるんですか?

芳賀:僕は自分の解釈を話しちゃうんですよね。これ、緊縛師の方がどう思うかは別として。僕の中では緊縛の縄っていうのは、ある意味アニメの触手のような、人間の手足の延長のようなものだと思ってるんです。だから女性をできるだけ感じさせたいというなら、それは縄じゃなくてもいいじゃないかと。もっと精神的な部分で繋いでしまえば……目と目をしっかり合わせるだけでも女性は果てますし。結局、その時のコンディションを互いに熟知していれば、どんなシチュエーションでもイケるはずなんですよ。

――確かに、ハード路線にいくよりも前に、もっと互いの理解を深め合うっていう努力は必要かも。

芳賀:相手が求めていることをきちんと分かるようになれば、究極論としてセックスに縄はいらないかもしれませんよね。あれも一種の心の解放なので。相手の心を解放させてあげようとすれば、ちょっとずつでも緊縛と似た快感を得ることはできると思うんです。その方が肉体的なリスクも少ないので、そちらを目指されては? というアドバイスはしています。

――でも、短絡的に言ってしまうと、2人で満足できないなら3人でっていうパターンもありますよね。

芳賀:それもアリといえばアリですよ。ただ、リスクも伝えます。ハプニングバーに行かれるという場合も、性感染症や妊娠など、覚悟の上で。ハプバーって一般人も多くてセックスに対してもノリが軽いですからね。「行ってみようぜ!」くらいの感覚では危険ですよ、と。

――リスクを承知の上でならどうぞってスタンスですね。

芳賀:たまにその危険性を求めていく人もいますからね。自分からドハマりしたいですっていう人には背中を押してあげます。ただ、そのリスクについてはきちんと言い含めますよ。そうしないと正しい啓蒙にはなりませんからね。感染症や妊娠に至ってしまった場合、誰が責任を負うのかとか。その後の心身のケアとか。そこまで話した上で「行ってらっしゃい」と。

――確かに「啓蒙」って言葉がぴったりきますね。そして、すごく説得力がある。芳賀さんは一度離婚をされてるというお話でしたけど、やはりそのときの経験はアドバイスする上でも役立っていますか?

芳賀:役立ってますね。僕は特に、アドバイスの場でも最初に自分の話をよくするので(笑)。それを踏まえて思うのが、男もやっぱり「セックス=心」なんだな、と。セックスの悩みを解決することって、やっぱり心の部分が一番大きいんですよね。それと、本当に解決したいと思っているかどうか。

――ああ、前回も言われていた通り、悩みを共有したいだけの人って絶対に解決しようとは考えてないですもんね。

芳賀:だから、僕の元に来てくれた時点で、実は悩みってほとんど解決に向かってるんですよ。特にカップルだとわかりやすいんですけど、最初に来た段階ではすごく距離感があるんですよ。お互いに、メモとか取ったりして。でも、僕が「コレだ!」という部分をつついて話すと、帰りにはだいぶその距離って縮まってるんです。「ありがとうって言わない」「スキンシップがない」「別室で寝てる」。カップルのどちらかがそれを心に引っかけて、どちらかがそれに気づいてない。例えば、1時間でそれを1個でも見つけ出せば2人の表情が変わるんです。

――すごい……。本当に「セックス=心」という原理が証明できる話ですね。

芳賀:実はほとんどのカップルの場合、そのあとで男性は一人で来ますね。「お陰様で愛人との仲も良くなりました」って(笑)。そういうところが面白いですよね。

――いいのか悪いのか(笑)。ちなみに、セックスアドバイザーとコンサルタントの違いって何ですか?

芳賀:アドバイザーは「セックスができない」という人たちに、セックスを楽しめるようにするためのアドバイスを送っています。セックスコンサルタントは、本人たちがよりよくセックスをプッシュアップしたい場合ですね。

――しかし芳賀書店の専務としてお忙しい中、かなり活動的ですよね!

芳賀:そんなに負担ではないんですよ。ある意味、これが息抜きというか。本当に自分のセクシャル観が正しいのかの指針にもなりますしね。自分が話したことでスッキリした顔で帰っていただく時、自分も救われてるよな感じです。

――芳賀さんが今、新たに関心を持たれている分野はありますか?

芳賀:不妊治療の方面にも強く関心がありますね。僕の女友達で、不妊治療の病院に勤めている人がいるんですが、その人から聞いた話では精子を採取する際、普通のセックスで出る精子と病院で採取する精子では、質も量もぜんぜん違うらしいんですよ。セックスで出した方が元気いっぱい。それだけ人間のメンタルによって、変わるって凄いことですよね。

――それ、面白い話ですね。そう考えると、本当に不妊治療の現場において、その採取法がベストなのか……。

芳賀:そう。女尊男卑になりがちな世界だからこそ、そこを平にしていかないと。例えば、採取室でAVだけでなくアダルトチャットみたいなリアルタイムでエロを感じられるものを置くとかね。ただ、これが女性側からクレームになりそうだっていうのがネックなんですよ。「ほかの女で抜いた精子で子どもを作るなんて!」ってね。

――それこそ、芳賀さんがその女性のカウンセリングをしてあげたらいいような気が……。

芳賀:(笑)。確かに、それで変わる部分ってあるかもしれませんね。医療の現場でもお役に立つことができるなら光栄ですね。

――アダルト業界の問題点から、世の中の人々のセックス問題、さらに不妊治療の問題まで……。とことん広い芳賀さんの視点に脱帽です! ありがとうございました!
(取材・文・写真=もちづき千代子)

芳賀英紀
Twitter:@hagashoten

神田神保町にある老舗書店・芳賀書店の専務。セックスアドバイザーやコンシェルジュとしてユーザーからの悩み相談を受け付けているほか、講演会やイベント企画など、幅広い活動を行っている。