両国に店を構えていた四ッ目屋など、いわゆるアダルトショップ店が江戸時代の性の文化の一端を担ってきたことはいうまでもない。しかし、市井の女性が頼りにしていたのは、何段にも重ねた商い箱を大風呂敷に包んで背負い、行商して回った小間物屋だったのである。

手元の国語辞典で【小間物】を引いてみると「婦人の化粧品・装身具や日用品などのこまごましたもの」とある。
つまり、江戸時代の小間物屋が扱っていたのは、白粉、口紅、髪油、カンザシ、櫛……。しかし、商い箱の一番下には、たけり(男根張形)を忍ばせていたのである。
なぜ、小間物屋が男根張形を扱うようになったかというと、カンザシや櫛などと素材が同じだからだ。べっ甲、水牛の角…おそらく男根張形はべっ甲師が内職でこしらえ、小間物屋はそこから仕入れていたにちがいない。

小間物屋あたりを見ては一本出し

小間物屋は訪問先の女性の顔をうかがいながら、「こんなものはいかがでございましょう」と、男根張形を取り出して見せた。
一方、男根張形に慣れていない女性たちもとっても、四ッ目屋などのアダルトショップ店と違って、便利な存在だった。生きもののように動かす小間物屋男根張形の中には、どうしても説明が必要なものもあった。
それが、「きびすがけ」という男根張形だ。
きびすを漢字で書けば「踵」、つまりかかとのことだ。よくなると早足になる長局普通、男根張形は根本を握って抽送する「片手づかい」なのだが、この男根張形は根本にひもがついていて、かかとに結びつけて入れたり出したりする仕掛け。
どうして「きびすがけ」が人気商品になりえたのかよくわからない。
で、知り合いの風俗嬢に、ゴム製ディルドの根本にひもをつけ、「きびすがけ」を再現してもらったことがある。
ーーどう、気持ちよかった?
「う~ん、普通のバイブだと自分の意志が強く働くでしょう。ところがこれだと、自分の意志とは別な動きをするんで、それはそれで気持ちいいよ」
――なるほど、生身の男の男根みたいなもんで、自分の意志ではどうにもならない。そこがいいのか?